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新大久保文化通り診療所

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コラム:気になるおなかの話

ピロリ菌の話

2018.11

ピロリ菌

ピロリ菌の発見

1983年、オーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルがヒトの胃からの、らせん状の菌を培養することに成功しました。1982年4月のイースターのとき、マーシャルの実験助手が休暇をとったため、マーシャルは通常は数日で終わらせる培養を、5日間そのまま放ったらかしたことにより、休暇後に培地上に細菌のコロニーを発見し、ピロリ菌の発見につながったという逸話を残しています。
私が1984年に大学を卒業した頃、世界中の消化器病関係の学会で当時はまだ ”Campylobacter pylori ” と呼ばれていたピロリ菌が一世を風靡していました。その後、胃がんをはじめとする消化器疾患に留まらず、いろいろな疾患との関連の研究、検査法の確立、除菌治療の開発、保険適用と、私は臨床医として30年以上をピロリ菌と一緒に歩んできたと言っても過言ではありません。ただし、ピロリ菌の基礎的研究に関わったことはまったくありませんが。

除菌療法の保険適用

1987年に“Helicobacter pylori ”と正式に名称変更され、その検査法と治療法の確立により、2000年11月にまず胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対して日本でやっと保険適用されました。その10年後の2010年6月に胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がん内視鏡治療後の適用拡大がなされました。その後、対象人口が多すぎるなどの問題で懸案となっていた、慢性萎縮性胃炎に対する除菌も2013年2月になってようやく適用拡大になりました。胃がんの予防を目的としたもので、これを契機にピロリ菌の除菌が一般化されました。それは、データにもはっきり表れており、2013年以前の一次除菌治療件数年間60万件前後であったのが、2013年は倍以上の130万件にのぼり、2016年には160万件を超えました。

除菌による変化

除菌の普及によりピロリ感染陽性率も劇的に変化しました。1974年に50歳代で90%以上、20歳代でも50%以上であったのが、2014年にはそれぞれ40%台、10%以下と激減しています。ピロリ菌感染率の低下により胃がん死亡率および死亡者数も若年者を中心として明らかに減少してきていますが、 70歳以上の高齢者における胃がん死亡者数は減少していません。 今後も若年者の感染率低下とともに胃がん死亡者数の更なる減少が期待されますが、75歳以上 の高齢者に対する対応が喫緊の課題と考えられています。

エンドロール

人類は6万年前からピロリ菌に感染しているといわれています。ヒトからヒトへと感染する際に遺伝子を変異させて生き延びてきた結果、人種や民族によって多くのタイプに分化しており、逆にそれを遡ることにより人類の歴史をひもとく鍵ともなっています。6万年にわたり共存してきたピロリ菌を根絶することは可能なのか、また根絶することにより何が起こるのか、果たしてそれを見届けることができるのか。ピロリ菌を巡る物語のエンドロールを是非とも観たいと願っています。