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コラム:気になるおなかの話

腸は第2の脳?

2018.10

腸は第2の脳?

前回、第2の脳とも言われる腸の声に耳をかたむけてはどうですかと述べました。実はこの「腸は第2の脳」という言葉が以前から気になっていました。この言葉を初めて本格的に使ったのは、Michael D. Gershon とされ、20年前の1998年に”The Second Brain”という著書を書いています。「第2」というのはどういう意味なのでしょうか。

はじめに腸ありき

発生学的にみると生物に最初にできる臓器は、脳でも心臓でもなく腸です。生物の進化からみてもヒドラやイソギンチャクなどの腔腸動物には脳はなく、腸が脳の役割も果たしています。進化の過程で特殊化した細胞、 ニューロンと呼ばれる神経細胞が腔腸動物の腸から発生し、神経システムを形成していったのです。腸が先にあったのですから、発生した順番から言ったら逆になります。Gershonの著書を読むと、腸管の神経システムは中枢神経系に勝るとも劣らない独立した神経系を形成していることを強調しており、”The Second Brain” という言葉は「もうひとつの脳」と訳した方が本来の意味に近いと思われます。しかもその副題に “Your Gut Has a Mind of Its Own” とまで書いています。

内臓の擬人化

以前、あるテレビ番組で内臓を擬人化して、内臓同士が会話をしているような演出をしているものを見かけたことがあります。「脳くん」、「胃くん」など内臓の擬人化したイラストもあるようです。「腸の声に耳を傾ける」という表現も腸を擬人化したものですが、実際に内臓が心を持ち、感情の交流や意思の疎通が出来るとしたらどうなるでしょうか。

「生きている腸(はらわた)」

海野十三(うんのじゅうざまたはじゅうぞう)という作家の存在をごく最近知りました。昭和初期に活躍した作家で、作品も多く発想も奇抜で、日本SFの父ともいわれています。松本零士が海野作品のファンで、宇宙戦艦ヤマトの初代艦長沖田十三の名前が沖田総司と海野十三に由来するといわれています。彼の作品に「生きている腸」というのがあります。主人公の医学生が刑務所の医師から「腸」を手に入れ、「リンゲル氏液」の中で飼育を続け、実験を行うことにより「大気中」でも生存可能になり、意思の疎通も出来るようになっていく物語です。読んでいてとても気色が悪く、結末もなんとも言えず、読んだことを後悔するくらいの小説で、とてもお薦めは出来ませんが、昭和初期にこれだけの発想をしたことは驚異的です。これ以外に内臓に「人格?」を与えたような話はみたことはありません。

腸の再生

iPS細胞などの技術の進歩により腸管の再生も可能になる時代がいつかはやってくると思いますが、腸管の機能として消化・吸収だけではなく、血管、神経系、免疫などの機能の点でも問題が解決されるのには時間がかかるような気がします。さらにもし腸にも人格があるのだとしたら、一人前の腸になるために教育が必要となるのかもしれません。そういう時代がやってくるのは楽しみというより、とても怖いような気がしますが、その頃にはとっくに「脳」がAIに支配されてしまっているかもしれませんね。