内科・消化器内科
内視鏡検査・健康診断

新大久保文化通り診療所

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コラム:気になるおなかの話

大腸内視鏡に対する思い

2019.4

大腸内視鏡の歴史

大腸内視鏡の歴史を振り返ると、Wikipediaでは機器の開発者は東京大学の丹羽、弘前大学の松永、東北大学の山形とされています。挿入法については、弘前大学の田島 強が世界で初めて盲腸まで挿入する方法を確立したと、一般的に認められています。
田島先生は私と同門の大先輩で、大腸を専門としてきた私にとって師匠の師匠にあたる存在です。そのため、大腸内視鏡は私にとって特別な検査となっています。田島先生が開発した逆「の」字型挿入法は、「二人法」といって長いスコープを術者とスコープの入れ出しを行う介助者(看護師または研修医)との二人で行う挿入法でした。術者が両手で上下、左右アングルを駆使して、管腔を確認し、介助者がスコープを進めたり、抜いたりしながら挿入していく方法です。術者が長いスコープの保持をする必要がないので細かい操作が可能で、介助者が熟練している場合には今でも理想的な挿入法ではないかと私は思っています。その後、かの有名な新谷 弘実が「一人法」を世界に広めた結果、現在の世界標準となっています。
二人法では処置の場合などにはもう一人の介助者を必要とするなどの効率面と、どこの病院でも常に熟練した介助者がいるとは限らず、検査の普及という点からも一人法にならざるを得なかったと思います。私自身も最初は二人法で覚えましたが、病院の異動などを契機に一人法に移行していきました。

大腸内視鏡検査はなぜ苦しいといわれるのか

本来大腸には大量の便とガスがありますが、内視鏡検査時には前処置の下剤によって液体とわずかなガスが残った状態で始まります。管腔が虚脱した状態では視野の確保が難しく挿入できないため、空気を入れ進行方向の確認を行いながら挿入していきます。もともとお腹の中のスペースは限られており、その中に長い腸が虚脱した状態で何とか収まっていたものが、腸内に空気をたくさん入れてしまうと、腸管同士が圧迫し合い、お腹がパンパンになりとても苦しい状態になってしまいます。それを防ぐために最小限の送気で腸管を伸ばさないように蛇腹のようにたたみながら入れるという高度な技術を必要とするわけです。
手術の既往などで癒着のある場合にはさらに挿入は困難となります。

人によって大腸はさまざま

人の顔が皆違うのと同様に、大腸の長さ、走行はさまざまです。さすがに左右が逆になっている内臓逆位のひとはまれですが、人によってスコープの進み方も違いますし、同じ人でも毎年やっていると日によって微妙に感覚の違いを感じます。
大腸の半分以上には腸間膜があり可動性を有しますが、その部位の長さや走行の状態によって挿入の難易度が決まります。逆に本来固定されているはずの部位の固定が緩く、スコープが安定しない場合も挿入困難となります。また、送気やスコープ操作による腸内の圧の変化に対する感度も個人差がかなり大きく見られます。非常に敏感な人ではちょっと空気を入れただけで強い痛みとして感じる人もいます。

鎮痛剤や鎮静剤の使用

大腸は、通常平滑筋の収縮と弛緩を繰り返す蠕動運動をしており、筋肉が緊張した状態で送気をして膨らますと抵抗があるだけでなく、痛みとして感じやすくなるため、鎮痙剤の投与は一般的に行われています。
内視鏡機器の進歩により、最近では基本的な大腸内視鏡の挿入法を学べば時間はかかっても何とか最終目標の盲腸までの挿入は可能です。ただし、技術が未熟だと送気量も多くなり、操作も荒くなるため患者さんの苦痛は大きいものになります。熟練するまでには、医師個人の資質と努力にもよりますが相当の件数をこなす必要があります。ほとんどの病院がわずかな指導医と発展途上の医師とで構成されている現状では、患者さんの不安や苦痛を少しでも和らげるために鎮痛剤や鎮静剤の使用が必要となるわけです。
一方で、大腸内視鏡検査においては穿孔などの重篤な偶発症もあり、検査中の痛みの訴えはその危険信号として重要です。静脈麻酔で意識がない状態で検査を行う施設も少なからずありますが、私は危険信号を察知することの重要性から、患者さんの強い希望がない限り、鎮痙剤と鎮痛剤のみで覚醒した状態での検査を標準に行っています。

大腸内視鏡検査はアナログ

苦痛の大きい内視鏡検査に代わるものとして、カプセル内視鏡や大腸CT検査(CT Colonography)などが実用化され、大腸内視鏡挿入困難例に保険適用となっています。それらの検査の進歩もめざましいものがあり、診断についてはAIなどによる自動診断の進歩も著しく、いずれは取って代わられる時代が来ると思います。しかし内視鏡の挿入はアナログ的要素が大きく、ポリープの切除などの治療となるとほとんどアナログの世界で、しばらくは人間が頑張ってやっていくしかないと思われます。ただし、遠隔操作による内視鏡システムは「ダビンチ」などのロボット手術の進歩を見ているとそう遠い将来ではないような気がします。

数年後には東京から地球の裏側の患者さんに対してロボットで大腸ポリープを切除できるようになっているかもしれません。