内科・消化器内科
内視鏡検査・健康診断

新大久保文化通り診療所

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コラム:気になるおなかの話

内視鏡に上手い、下手ってあるの? その2

2019.6

上手な内視鏡とはいったいどういうものなのでしょうか?
治療については特殊な手技となるので、ここでは、特に症状のない場合に行うスクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査についてお話しします。内視鏡検査はスコープの挿入、粘膜の観察、内視鏡診断の作業から成り立っています。必要に応じてさらに生検による病理診断が追加されます。

挿入

上部消化管内視鏡検査では、まず口または鼻からスコープを挿入し、咽頭を経由して食道入口部に入り、食道〜胃〜十二指腸へと進めて行きます。通常は、十二指腸下行部の十二指腸乳頭付近まで挿入します。最初の挿入が、最大の関門と言っても過言ではありません。喉の苦しさが耐えきれず、鎮静、鎮痛を必要とすることは少なくありません。時に、胃の変形が強く、胃から十二指腸への挿入が困難な場合もあります。術後の胃については意外な再建がなされていることもあり、知識と経験を要することもありますが、通常の挿入だけであれば1〜2ヶ月の研修でスムーズにできるようになります。

観察

挿入および観察の順番についてはいろいろな流儀があり、施設や医師による違いがありますが、全体をくまなく、見逃しのないように観察するというのは同じです。挿入時にもある程度の観察は行いますが、詳細な観察をするには、ヒダの間もよく見えるように、十分な送気により胃を膨らませ時間をかけてよく観察する必要があります。しかしそれは患者さんにとっては大きな苦痛となってしまいます。苦痛を減らそうと、送気が不十分であれば詳細な観察ができないという葛藤を抱えながら検査をしているのです。

診断

正しい診断には十分な観察が必要ですが、観察できたからといって、きちんと診断できるわけではありません。診断には知識と経験が重要で、指導医はそのためにいると言えるかもしれません。目には見えていても気が付かない、重要な所見であることが判断できない、ということが少なからずあります。つまり、まんべんなく詳細な観察を行おうとするとどうしても時間と手間がかかってしまうが、時間をかけたからといって必ずしも正しい診断ができるとは限らないということです。診断については、ちゃんと写真に写っていればAIの方が正確な診断が可能になる時代がそこまで来ています。診断に限って言えば、近い将来にほとんどの検査医はただスコープを挿入し写真を撮る作業をこなすだけの存在になってしまうかもしれません。

診療の現実

患者さんにとって望ましい検査は、短時間で苦痛がなく、正しい診断ができる検査です。しかし、現実には診療報酬はいわゆる出来高制であり、検査の件数は売り上げにつながるのに対して、検査の質は直接には診療報酬には反映されません。極端に言えば、初めて検査する研修医がやっても名人がやっても同じ料金で検査を受けることができるわけです。経営を考えれば、給料の安い医師が短時間で多くの検査をこなしてもらうのが理想ということです。患者さんの側から見ても、症例数の多い施設で、検査の待ち時間も少なく、短い時間で苦痛なく検査が受けられるということは望ましいことのように思われますが、稀ではあるとは思いますが、落とし穴もあることを注意しなくてはいけません。

上手い、下手より大事なこと

私の理想とする内視鏡検査は「早く」「楽に」「丁寧に」です。特に重要なのは「丁寧に」だと考えています。「早く」と「楽に」を多少犠牲にしてでも、「丁寧に」を優先しています。年齢とともに視力(特に動体視力)や体力の衰えを自覚し、もっと上手くなりたいという気持ちはあるものの、件数をこなすのは厳しくなっており、1件ずつを丁寧に行いたいという意識が強くなってきました。昔からずっと言われてきた「一期一会」という言葉が心に染みてくるようになりました。当診療所にきて1年が経ちましたが、初診から話を伺い、検査の必要性を判断し、自分で検査を行い、その結果から治療方針を決めていくという作業を一貫して行い、高度機能施設への紹介の必要性も判断するということが自分にとって自然なことであると実感しています。逆に自分ひとりでの判断の危険性も意識しながら緊張感を持って診療を行っています。人間による検査ですから、その上手い下手は確かにあるとは思いますが、検査は所詮検査に過ぎず、正しい診断に至るための一つの手段に過ぎません。見逃しや偶発症なども絶対に無いわけではありません。検査手技が重要なのは確かですが、それ以上に大事なことがあるような気がします。